一昔前の作業靴はかなり重いものが多かったのは確かです。しかし、素材や構造の工夫が積み重なって軽量タイプの作業靴が登場しました。そして、今では軽量タイプの方が人気になり、多くの現場で利用されるようになっています。
軽量タイプの作業靴がスタンダードとなったことにより、購入時には気をつけるべき点が増えているので、選び方のポイントを押さえておきましょう。
作業靴を履いて仕事をしている人にとって、重いことは重大な問題になります。重ければ重いほど足や足首に負担がかかるのは明らかで、歩く量が多い現場では特に労働者に大きな負担を強いることになるでしょう。今では軽量タイプの作業靴を使っている現場が多くなっているものの、一昔前では重い作業靴を使うのが当然となっていました。
スニーカーなどに比べてなぜあえて重い作業靴にしていたのでしょうか。まずその理由を理解することが作業靴の選び方で重要な点を把握するのに欠かせません。作業靴を履く現場は様々な危険があるのが一般的です。作業着に身を包み、ヘルメットも被っていることも多いでしょう。
足元に重いものが落ちてきたり、足を勢い良くぶつけたら大怪我をしてしまうようなものが低い位置にあったりすることも稀ではありません。現場で行う作業は集中力を要するものが多く、作業に没頭しながら歩いていたら足をぶつけてしまって怪我をしたというトラブルはよくありました。
また、作業に集中するあまりに落下物に気づかず、つま先に重いものが落ちてきて骨折してしまったという事故も発生しています。この対策として十分に丈夫な作業靴を準備する方針が立てられていました。固くて丈夫な素材を使うと重量は増えてしまいやすく、重い作業靴になってしまっていたのです。
このような事情を踏まえて軽量タイプの作業靴を選ぶときには、まず安全性について考えるのが大切です。様々な素材が開発されてきて軽くて丈夫な素材も増えたのは確かでしょう。しかし、一昔前に使われていてものに比べれば衝撃や圧力に対して強いとは言えません。
ただ、安全性を高めるための工夫を凝らしてある作業靴も増えてきています。例えば、つま先の部分を少し高く作ることによってつま先が引っかかりにくくしてある仕様のものがあります。これによって転倒のリスクが減るだけでなく、うっかり何かものを蹴ってしまったときにも爪を守ることができるので大きな怪我にはなりにくいでしょう。
また、落下物対策が必要な現場のために、つま先の部分にはカバーがつけられている仕様の作業靴もあります。それ以外の部分を軽量化することで足の負担が少なくなっているものもあるので、現場によっては検討してみた方が良いでしょう。
メーカーによって様々な技術を駆使して、軽量ながらも安全性を高くするための工夫が行われています。その内容を確認して現場に合った仕様の作業靴にするのが軽量タイプの作業靴を選ぶ上で重要なのです。
類似している点として確認しておきたいのが耐久性です。重くて丈夫な素材は長持ちするのが一般的です。それに比べると軽い素材はあまり耐久性には富んでいません。そのため、超軽量タイプの場合にはしばしば耐久性が問題になることがあります。
生地が薄いことも多いので、摩耗であっという間に劣化して買い換えなければならないという場合もあるでしょう。ただ、作業靴が磨耗してきてしまう場所は限られています。基本的には土踏まずの部分を除く靴底が減ってしまいやすいため、この部分に他の丈夫な素材を使って補強してあるものを選ぶと長く使えるでしょう。
ただし、現場での作業内容によって磨耗しやすいところも違うので現場で使っている靴を確認してみた方が良いかもしれません。
今までずっと重い作業靴を使ってきたという場合には、軽量タイプに変更する前によく現場での作業内容を確認した方が良いでしょう。もしかすると重い作業靴のままの方が良い可能性もあるからです。例えば、化学や生物学などの基礎研究を行う工場の場合には平坦なところでちょくちょく歩きながら作業をすることが多いでしょう。
この場合には足への負担を軽減するために軽量タイプの作業靴にした方が賢明です。しかし、高い場所で体のバランスを取りながら力仕事をするような建築や工事を担う人の作業靴の場合には重い方が良いこともあります。作業靴が重いとしっかりと地について安定するので、体のバランスが少し崩れても落ちずに済むことが多いからです。
さらに、慣れの問題も考慮した方が良い点です。今までずっと重い作業靴を履いていた人が突然軽い作業靴を履くと、慣れるまでにはかなりの期間が必要になります。特に、いつもルーチンワークをしていた人の場合、体の動かし方を直感的に覚えていて、靴が変わっただけで作業効率が低下してしまうこともあるのです。
このようなリスクがある場合には、一度中間的な重さの作業靴に切り替え、徐々に軽くしていくという方針を立てた方が賢明です。
作業靴は会社から支給されるのが一般的です。会社としてはコストを削減しなければならないという観点から10円でも安いものを選ぼうと考えてしまうことがあります。しかし、長い目で見ると多少のコストがかかったとしても、従業員の負担を軽減する方向性で作業靴を選ぶのが賢明です。
屈曲性に優れている素材を使っていたり、土踏まずのところの刺激を減らせるようにエアーを入れてあったりした方が負担は小さくなるでしょう。このような工夫をすることで製造コストも高くなるのは明らかで、二倍以上もの価格差が生じることもあります。
しかし、それによって従業員の疲労が軽減されれば仕事のパフォーマンスも上がり、病気や怪我のリスクも低減されるのです。また、作業靴は一度購入すれば一年以上は使えるのが一般的です。作業内容によっては何年も使い続けられることもあるので、数千円の違いは大したものではありません。
軽量タイプの中でも価格差は大きいので、つい安いものから選んでしまいがちですが、高いものにどんな機能性があるのかを一度は確認しておきましょう。その機能の中に現場での作業に適しているものが見つかったら、高くても導入するのが賢明です。
それが長期的に見てコストを下げることにつながり、従業員の満足度も向上させられるでしょう。